メッセージ

私が在宅療養中のご利用者様のケアに関わらせて頂く中で、今でも忘れられないのエピソードがあります。それは、がんの末期で在宅ケアを受けながら、限られた時間を過ごされるご利用者様を担当させていただいた時のことです。

その方は、有名な温泉地の出身で小さい頃から温泉に親しんでこられ、大人になっても温泉に入るのが大好きでした。

病状が進行し、体調が思わしくない日が増えてきた中でも「温泉に入りたい」という願いがありました。

医療者としては、経口摂取がままならない状態で温泉に入るのは脱水になったり急変したりするリスクがあるため一般的には、勧めることはできません。

しかし、この方の希望を叶えるために、様々な職種が協力し、温泉に入るための工夫を考えました。温泉に行く前後には訪問し、点滴を行い、体調を確認しました。

結果的に、無事に温泉に入ることができました。そして、そのことを本当に嬉しそうに話してくれました。

数週間後、自宅で家族に見守られながら、穏やかに最期を迎えることができました。

この経験を通じて、病気や障がいがあっても、過去や未来にとらわれず、今この瞬間を生き、輝くことができることを学びました。

医療者としては、ついリスクを意識しがちですが、その人の願いを尊重し、彼らが持っている力を信じてサポートすることの大切さを再認識しました。

微力ながらも在宅療養する方々のお手伝いができることは、大きなやりがいと誇りを感じます。

これからも利用者様やその家族の思いに寄り添ったケアを大切にし、サポートしていきたいと思います。